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爆走!闇タクシーで珍道中 〜キューバの英雄チェ・ゲバラ

チェ・ゲバラ
霊廟だけで高さが約15メートルある。6メートルほどのゲバラ像が立っているので、全体で20メートルを超える巨大さだ

「1960年頃、世界で一番かっこいい男がチェ・ゲバラだった」(ジョン・レノン)。

アルゼンチン人の医者でありながら、キューバ革命を成功させたゲバラの墓参のため、僕は2000年にキューバの首都ハバナを訪れた。

彼は国民的英雄であり、墓は首都にあると頭から信じ込んでいた。ところが観光局の職員に墓所を尋ねてみると、ハバナから約300キロも離れたサンタクララに眠っているとのこと! ほぼ東京〜名古屋間に匹敵する距離だ。

キューバは米国の経済封鎖で石油不足に陥っており、公共の長距離バスがない。国営タクシーは300ドル以上もするため途方に暮れていると、職員がそっと耳打ちしてくれた。「違法だけど、闇タクシーがあるよ」。

闇タクシーは国に登録料(営業料)を払わず、こっそりタクシー業をしている悪党だ。旧市街のタクシー銀座でさっそく値段交渉を開始。ところが誰もそんな遠い所まで行ってくれない。僕はノートに大きく“サンタクララ”とマジックで書き「ポルファボール、サンタクラーラ!(サンタクララへ連れてって)」と絶叫した。

すると、初対面のくせに「ハロー、マイフレンド」と満面の笑みで近づいてきた人物がいた。この男、天使か悪魔か。交渉の結果は135ドル。相場の半額以下、有難い。陽気な男はカルロス(31歳)と名乗った。

「さあ、さっそく出発だ!」と思いきや、カルロスは車を持っておらず、友人のホセ(35歳)が車を出してくれた。ホセは小柄で、はにかむように笑う物静かな男。彼となら往復600キロも平気と胸を撫で下ろしていたら、カルロスが助手席に乗り込んだ。ちょっと待て、アンタも行くんかい!? 

「俺も英雄ゲバラの墓には行きたかったんだ」。

ガソリンは高価ゆえ、2人ともサンタクララに行けるので大喜び。

車内でカルロスは警官対策を切り出した。「後部座席の足元にタオルケットがあるから、俺が“ポリース!”と叫んだら素早く身を伏せ、それを被ってくれ」。

おかげで彼が叫ぶ度に体を右へ左へ倒れさせ、大忙しだった。

ホセは闇ガソリン屋へ寄ると、怪しげな液体を買ってオイルタンクに流し込み始めた。

「あれはな、薄め液でガソリンを増やしてるんだぜ」。そう言ってカルロスは僕に目配せしたが、そんなことして途中で止まったらどうすんだよとハラハラした。

ホセの超絶マシンテクニックはカリブの大気を切り裂き、平均時速110キロでサンタクララに乗り付けた。片道4時間ちょい。無事に到着したことを天に感謝した。

街で一番高い建造物がゲバラの霊廟。革命後は権力の座に固執せず新たな土地へ向かい、自らの理想に殉じた漢。39歳の若さで散った彼は今も市民から最大級の敬意を払われていた。お喋りなカルロスが黙り込み、感極まって墓の上のゲバラ像に見入っている。霊廟と向き合う僕らの間を、夕暮れの心地よい風が通り抜けていった。

「ゲバラさん、あなたの理想主義に希望をもらいました。ムーチャス・グラシアス(ほんとありがとう)!」

チェ・ゲバラ
静かなる男ホセ(左)とマシンガン・トークのカルロス

※『月刊石材』2011年5月号より転載

墓マイラー カジポン・マルコ・残月(ざんげつ)さん

カジポン・マルコ・残月(ざんげつ)

1967年生。大阪出身。文芸研究家にして“墓マイラー”の名付け親。歴史上の偉人に感謝の言葉を伝えるため、30年にわたって巡礼を敢行。2,520人に墓参し、訪問国は五大陸100ヵ国に及ぶ。
巡礼した全ての墓を掲載したHP『文芸ジャンキー・パラダイス』
http://kajipon.com) は累計6,500万件のアクセス数。

大阪石材工業 
企画スポンサー:大阪石材工業株式会社

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