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忘れられない一期一会 〜ヘミングウェイに会いたくて

ヘミングウェイ
木々の間に眠るヘミングウェイ。フレミングさんが先に見つけた

墓地は基本的に郊外が多く、観光ルートから離れているために、地元のローカルバスや徒歩で向かうことが多い。たどり着くまで大変だけど、その分たくさんの出会いがある。

2000年夏、僕は初めて全米一周の墓巡礼を敢行した。期間は1ヵ月。

グレイハウンドという長距離バスが全土を結んでおり、一ヵ月乗り放題チケットが当時37,000円だった。めちゃくちゃ安い。夜行バスにも乗車できるため、交通費と宿代の問題が一気に解決。墓地は無料だから、昼に墓参、夜に移動というサイクルで周っていけば、理論上は食費を入れても10万円以下で全米一周が可能だ。

旅の終盤に予定していたのが、アイダホ州ケッチャム村に眠るノーベル賞作家ヘミングウェイの墓参だ。作家として名声を得た後も、独裁者フランコと戦うためにスペイン内戦に身を投じた行動する男。こちらも行動力で応えたい。

ケッチャムはバスの路線から大きく離れていた。停車中に地元の人に交通手段を尋ねたところ、隣町からタクシーを呼んで往復すると10万円以上かかると言われ卒倒寸前に。ケッチャムに向かって涙目で合掌し、バスに戻った。

しばらく走行すると後ろから右肩をトントン。振り向くと初老の紳士。

「君、さっきは泣いてたね」。

事情を話すと“フム”と少し考え、「明日、私はレンタカーでケッチャム方面に行くので乗せてあげよう」と提案。願ってもない幸運に耳を疑った。

問題は行程だ。紳士は美しい国立公園を眺めつつ進む4、5日の日程を予定していた。しかし、僕は帰国便が迫っており日帰りせねばならず、理由を話して断念した。 その数分後、再び肩を叩かれた。

「OK! レッツ・ゴー」。

男性の名はフレミングさん。デンマーク人の旅人で51歳とのことだった。翌朝7時に出発。ケッチャムは予想以上に遠く、ほぼノンストップで走行したにもかかわらず、片道5時間もかかった。

雄大なロッキー山脈を横目に車は疾走し正午に到着。食堂でサンドイッチを食べて腹ごしらえし、村の墓地へ。

ヘミングウェイの墓は木立の間にあり、フレミングさんいわく「彼は自然を愛していたからこの場所を気に入っているだろうね」。

1時間滞在した後、再び五時間をかけて出発地に戻った。実に往復11時間! 

いくら金欠とはいえ、ガソリン代だけでも払おうと財布を取り出すと、フレミングさんは片手で制止して首を振った。

「私はヘミングウェイが大好きなんだよ。しかし墓がケッチャムにあることは知らなかった。墓参りができて良かった」。

そして別れの握手。遠ざかる車を見送りながら、初対面の相手にこんなにも親切になれる人がいるのかと感激し、“この人に会えただけで、生まれてきたモトをとった”と思った。

そしてヘミングウェイに感謝した。“あなたが作品を残してくれたおかげで、フレミングさんと会えました”と。

ヘミングウェイ
大恩人フレミングさんと、アイダホ州を疾走したレンタカー

※『月刊石材』2011年2月号より転載


墓マイラー カジポン・マルコ・残月(ざんげつ)さん

カジポン・マルコ・残月(ざんげつ)

1967年生。大阪出身。文芸研究家にして“墓マイラー”の名付け親。歴史上の偉人に感謝の言葉を伝えるため、30年にわたって巡礼を敢行。2,520人に墓参し、訪問国は五大陸100ヵ国に及ぶ。
巡礼した全ての墓を掲載したHP『文芸ジャンキー・パラダイス』
http://kajipon.com) は累計6,500万件のアクセス数。

大阪石材工業 企画スポンサー:大阪石材工業株式会社

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