「直葬」「散骨」「送骨」・・・、本当にこれでいいのか? 僧侶であり、考古学者でもある長澤宏昌氏が、日本人が故人をいかに大切に埋葬・供養してきたか、「日本人の先祖観」を多くの考古学的な事例(遺構や遺物等)を挙げながら明らかにし、先祖祭祀の大切さを力強く、わかりやすく説きます。
本書は、著者の前著「散骨は、すべきでない―埋葬の歴史から―」(講談社ビジネスパートナーズ)の増補改訂版として、石文社から刊行されました。直葬や散骨、送骨など、現代のライフスタイルのなかで失われつつある先祖観を、考古学の観点から、あるいは民俗的側面からも見直し、かつ現代社会や家族のあり方に警鐘を鳴らし、散骨や直葬などの葬送形態の危険性を指摘。日本人が大切にしてきた先祖祭祀の意味を、力強く説きます。
■著者:長澤宏昌 ■発行:石文社
■四六判、本文324ページ、口絵カラー8ページ ■初版:2016年6月
《目次》
まえがき
第1章 埋葬の歴史と先祖観
1 埋葬の始まり
2 縄文時代の先祖観
3 弥生時代の先祖観
4 古墳時代の先祖観
5 古代の先祖観
6 中世の先祖観
7 近世と檀家制度
8 近現代の状況
第2章 民俗学から見た先祖観
1 先祖の意味
2 葬儀の意義
3 仏壇と位牌
4 盆と彼岸
5 寺院と民俗
6 柳田民俗学
7 仏教・神道と民俗
8 直会の意味
第3章 現代社会の実態
1 現代の埋葬を取り巻く環境
2 都市部の実態
3 家族
4 身の丈に合った生活とは
5 自分を知ること、感謝すること
6 行旅死亡人と家族、そして送骨
7 個人墓と家族墓と一族墓
8 散骨について
9 お墓参り
10 0葬?
11 終活と墓じまい
12 N氏の想い
第4章 批判に対する答え
1 寺や僧侶への批判
2 仏教と葬儀・供養儀礼の関わり
3 日本仏教の特徴
4 翻弄された仏教と寺院
5 僧侶の肉食妻帯について
6 戒名について
7 現代の仏教と僧侶が考えなければならないこと
第5章 直葬と散骨の危険性
1 自然葬に名を借りた始末
2 歴史的視点の欠如と現代の風潮
第6章 先祖観と謙虚さ
1 謙虚さの意識
2 今、何を成すべきか
あとがき
参考文献
《著者プロフィール》
長澤宏昌(ながさわこうしょう)
1955年山梨県生まれ。広島大学文学部史学科考古学専攻卒業。1979年山梨県教育庁文化課文化財主事、1982年山梨県立考古博物館学芸員・山梨県埋蔵文化財センター文化財主事、1996年先代遷化に伴い鵜飼山遠妙寺法灯継承、2004年山梨県埋蔵文化財センター退職。日蓮宗鵜飼山遠妙寺第54世、日本考古学協会会員、身延山大学非常勤講師。
著・共著に『縄文 謎の扉を開く』(松久保秀胤監修、冨山房インターナショナル)、『散骨は、すべきでない―埋葬の歴史から―』(講談社ビジネスパートナーズ)、そのほか論文が多数ある。