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108、双子ちゃんのお墓参り

墓参フォトコン2014応募作品

牧之原台地の新茶の季節を迎え、萌黄色に輝いています。
目を上げれば、富士山が柔らかな日差しの遠くに霞んでいるのが見えます。
私の故郷は、そんな牧之原台地の谷あいの小さな集落です。数年前の静岡空港の建設に伴い、実家は移転を余儀なくされました。
見上げれば、かつて囲炉裏の煙に燻された太い梁を持った家屋も、急斜面に張り付くような茶畑も、区画整理によって大きく様変わりしました。
実家を継いでいる若い世代にすれば、太い道路も通じ、また農作業も便利になったことでしょう。
しかし、幼い頃駆け回った野山が消えてしまったことに、私は一抹の淋しさを禁じえないのでした。
そして、鬱蒼とした杉林の中に、江戸時代から続くという一族先祖代々のお墓も区画整理に伴い、集落の新しい共同墓地へと移転しました。
私もそれを機に生まれ育った故郷に骨を埋めたいと考え、先祖のお墓の隣に墓地を購入しました。
明るく開けた共同墓地、それは幼い頃の思い出とは、いささか断絶した感のあるものでした。
さて、この春、大阪に住んでいる孫達が帰省した折、私ども老夫婦と嫁、二人の孫(男女の双子)でお墓参りをすることになりました。
生前、母の好物だった「あんこ餅」を供え、手を合わせていると、突然墓石の後ろから孫らが金と銀の被り物をつけて奇声を発しながら現れたのです。
そういえば、前夜、彼らが生まれてすぐに冥土へと旅立った曾祖母のために準備するものがある、と何やら部屋にこもっていた、それはこれを作っていたのか、と合点がいきました。
この被り物は、彼らなりの曾祖父母への手向けだったようです。山あいの静かな墓地での二人の姿は滑稽ではありましたが、彼らの思いはきっと彼岸で見ていた父と母に伝わったことでしょう。
故郷は変われど、人の思いは変わらず、そして思いは確かに継がれていくということを噛みしめずにはいられませんでした。
合掌

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